「オカリン、大丈夫?」
「まゆりか。大丈夫とは何がだ?」
普段の岡部の言葉。といっても、普段より元気が無いというべきか。それはラボメンの面々が気づいてる。なんせ、一応のところ所長が元気でないというのだから。正直顔色が悪い。貫徹とかでは無いのだろうけど、どうにも精細にかける。小さなミスを連発してる。最初は笑っていたのだけど、どうにもこうにも分かりやすいというか。もしかして、どこぞのDメールによりってやつか?
「Dメールの影響とか言わないわよね?」
「そういうのとは違うのだが、ちょっとしたものを作っていたら、時間を喰ったのだ。徹夜程度なんとも無いわ」
と何時ものように厨二病全開なのだが、その声にちょっと元気が無いのだ。まゆりも気づいてるし、他の面々にしても、まゆりの様子から分かるというか読み取れる。明らかにおかしいと。
「で、本当の所どうなのよ?」
正直に言えとにらみつける。流石にちょっとうなった。実際に何かがあったか、それとも
「朝、ミスターブラウンにシスターブラウンの世話を頼まれて、一緒に遊んでいたんだ。昼前までだが。誰も来なくてちょっと疲れただけだ。何気にサボったバイト戦士には後々、ミスターブラウンから酷いお叱りをうけるだろうがな」
「アレ? 私は今日は休みじゃあ」
「連絡手段持たないからなぁ。ミスターブラウンも急な用事と言っていたがな」
「って、それ、私のせいじゃない」
「それもそうだが、俺としては結構大変だったんだぞ」
しかし、岡部が疲れるほど連れまわしたよおうには思えない。その綯ちゃんなんだけど、今はおうちで夏休みの宿題中だとか。下の階が静かなのは、そういう理由なんだろうなぁ。今日は臨時休業ってところだったんだろう。
「あれ? じゃあ、空いてないからこっち着たけど正解だったの」
「まぁな。頼まれたのはお昼ご飯までだしな。その後こちらに着たら全員勢ぞろいだったわけだ」
「オカリンオカリン」
「なんだ?」
「リアル幼女と遊ぶなんてうらやましすぎるお」
「連れまわされただけだがな。早くにきていたら、ダルも味わえたぞ」
少し悔しそうな橋田に誰も声をかけない。要らない事はしないというか、下手な慰めはよくないから。
「でも、綯ちゃんってそんなに暴れるタイプじゃないのだけど」
「歩き回っただけだからな。後々フェイリスのところにも寄ったんだが。まゆりも居なかったからな」
「夏コミ前だしね。服をね」
納得だ。それにしても、なんだか不思議だ。綯ちゃんと岡部の組み合わせが。嫌ってるというか怖がってる感じだったと思うのだけど。それでも今は家で大人しく宿題なんかをしてるらしいのだけど。
「夏休みの日記に書ける内容になってるだろうな」
「あんたと一緒のことを書いてどうするのよ」
「ま、歩いた感想みたいなものだろが、本人がどう思ってどう書いたかなんて俺も見れないだろうしな」
確かにその通りだが、どうにも疲れさすほど歩かされたってのが驚きだ。綯ちゃん恐ろしい子だわ。岡部が大人しいのは助かるけどね。他の面々も同じように静かだけど。
「そういえば、まゆりは何で岡部を心配してるの?」
ふと思い出した。どこに心配する要素があったのか、全く無いように思えるのだけど。
「綯ちゃんが車に轢かれそうなのを身を挺して守ったのがオカリンだったからだけど」
「はぁ? 車に轢かれそうって、大事じゃないの!」
「怪我とかは一切無いから大丈夫だ。ちと昨夜の雨で濡れていた水たまりに突っ込んだくらいだ。で、濡れて帰って来ただけだ。心配には及ばんだろう?」
「綯ちゃんが無事なのは嬉しいけど、オカリンも無事じゃないといやだよ」
「わかったわかった」
本人にも多少は自覚があるのか頷く。なんだかんだでまゆりには優しいというか気心しれてるからこそだろう。
「それに大して濡れてないし、帰ってくる間にしみになった程度だろうに」
「擦り傷と打ち身してたし。綯ちゃんの前では我慢してたくせに」
「見えない位置だったし、これであの小娘が気にするところなど見たくもないからな」
そういうことか。なんだかんだで気にされても困るというよりも、返答に困るって事なのだろう。岡部にしてはなんだかぽくない反応なのだが。
「とりあえず、Dメール実験は今日はお預けだ。他のガジェット開発を急ぐか」
「他の?」
「軍資金稼ぎだお」
「ああ、そうだったわね」
研究機関とかでも無い上に、大学生が立ち上げたラボ。その居心地は良いのだけど、資金難というのが難点だから。さて、私も作りますかね。私っぽいもを・・・
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