「相沢、次お前の番だぜ」
「あ~、パス」
「おっ、どうしたんだ? 前の時もだったぜ」
「出せる札が無いんだよ」
斉藤と北川と相沢の三人で集まってトランプゲームをしていた。賭けをしてるわけじゃなく、時間つぶしにだ。ただ、運が無いのか相沢の手札は悪いらしい。
「このまま俺たちが勝つぜ」
「おお」
「かもなぁ」
ただ、どこか目をきらりと光らせて楽しそうに言う相沢という男。勝ち負けというのにあまり執着が無いというか、楽しそうにゲームをしている。
「これで終わりだ」
大富豪というゲームをしてる三人。クラスメートたちも見ている。楽しげにってところがつくが。そして、残り一枚という所で勝負をかける斉藤。
「ん」
一枚出して場が騒然となる。ジョーカーの数は二枚。一枚出ていててっきり北川が持ってると皆思っていた。伏せたカードの中に何があるか把握している。それは三人ともだ。
「げっ」
「じゃあ、こっちからいくぜ」
その後相沢が出したのは、3枚組み、2枚組みのオンパレード。北川も最初は対抗した。といっても、2枚組みになって2度出して残り一枚に持っていった。だが、相沢のはえげつなかった。上の数字になればなるほど枚数は少ないのは確かだ。一番強いのでもKだった。だが、Aと2がなくても闘い方はある。大富豪とはそういうものだ。そして、相沢も残り一枚で先に出す。
「上がりっと。だいぶ負けたから同じくらいかな」
大富豪の大富豪になったほうという事で計算すると、確かにそうだ。が、敗北感は斉藤と北川にあった。負けたというよりも、その手口の鮮やかさにだ。相手の枚数ギリギリを選んだ攻撃であるのは確かだし。ちゃんと覚えていたのだろう。
「そうだな。全員同じくらいだ」
「というわけだし、そろそろ終わろうぜ。受験も控えてるし」
受験の疲れからちょっとした娯楽をしていた三人。クラスメートたちもそれもそうだと机に戻る。そして、トランプを配っていた美坂から声がかかった。
「どこまで計算してたの?」
「秘密だ」
「そ」
計算。相沢という男が全て握っていた? まさか。勝率を弄るのは難しいことだし、トランプという運の要素もあるなら尚更だ。勝率というのを計算できるというのではないだろう。トランプのことだろう。三人でしたときのカードの枚数は52+2の54枚。それを3で割って、一人18枚。勝利を拾うのは意外と出来るだろうが、それでも頭は使う。受験で疲れてる頭でやってのけたのは馬鹿なのか、それとも悪戯心か。まぁ、それでもクラスメートの一人としては面白い勝負だった。
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