「紅瀬さん、どうかしたの?」
「え? どうかって何が?」
「あの、ほら、孝平くんと最近仲が悪そうっていうか」
「ああ。そのことね」
紅瀬桐葉は、そのこと程度で答えた。といっても、たいした事じゃない。最近孝平が忙しくてあまり一緒に居れないのが原因だ。それに下級生からの人気者でもある。そのことが拍車がかって見てしまったのだ。それを見て、ちょっと苛立ってしまい、更に距離が開いたのだ。
「本当にたいした問題じゃないの。分かってた事なんだけどね」
クールだ、アイスだと言われてるが、外に出てないだけで、内面は意外と純情である。孝平と付き合うようになって色々と分かってきてることもあるのだが。
「桐葉」
「何かしら?」
「ちょっと、こっと。って何か話してたのか?」
「ううん、いいんだけど。孝平くん、ちゃんと彼女見てないと駄目だよ」
「ん、ああ。そうだね」
孝平はそういって桐葉の手を取って歩いていく。クラスの中では皆が皆知ってるが、あまり周囲に知り渡ってない。そして、食堂まで手を繋いで歩いていく。
「いい加減手を離してくれないかしら?」
「だめ」
「もう、なんなのかしら」
困ったというのではなく、どこか力強く引かれることに桐葉としてどうして良いかわからないのだ。勿論、孝平は気にせずずんずん歩いていく。そして、お茶を置いて向かい合う。
「桐葉」
「何かしら?」
「教室だとしずらいからこっちにしたんだけど、一緒の大学に行きたい」
「??」
「だから、勉強しよう」
とりあえず目の前の彼氏を殴っても悪くないという想いがあったが、その彼氏は本気の目だった。やれやれと思う。自分と同じ大学行きたいから、一緒に出来る限りしようって事だ。支倉孝平というのはちょっと違う方向に思考がいってる。それを受け入れてしまってる点ですでに虜なのかもしれないが。
「後輩たちは良いのかしら? 可愛い子に告白されてたじゃない」
「ああ、あれは委員会のことで聞かれてたんだよ。ほら、清掃のことで」
「って、そっちなの!?」
「ああ」
「真剣な話してるからてっきり」
「まぁ、一応彼女居るのかくらいはきかれるけど、桐葉が居るんだ。居るって答えるだろうに」
「うう」
勘違いとか色々ある。それが恥ずかしいのだが。
「それに勉強だったら、生徒会の仕事休めるだろ」
一緒の時間を取るためにどうしたら良いか、彼なりに悩んでいたのだ。一緒に居たいという思いと居れるというのは別物だから。
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