「なのは、どうしたの?」
「あ、お母さん。どうもしないよ」
桃子は玄関をちらちらと気にしてるなのはに声をかける。誰もが気づいていたが何も言わないのはどうしたら良いか悩んでいたためだ。何より、この中で居ないのは長男の高町恭也のみ。美由希、晶、レンと揃ってる。恭也に関して言えば、過去お世話になった道場めぐりという事でただいまお出かけ中だ。しばらく出て戻ってくるを繰り返してる。
「お兄ちゃん、今日のうちに帰ってくるって言ってたから」
「ああ。でも、あの子も大変よね。色々回った道場が今も開いてるところだけって事で回ってるみたいだけど」
「恭ちゃん、なんだかんだで色々あるから」
挨拶回りというわけじゃないが、以前お世話になったお礼のために翠屋のお菓子などを持っての移動だ。それこそ大変だろうことは確かなのだが、本人は楽しげだ。ちなみに、フィリス先生からは口をすっぱくして言われてるのが『神速禁止』である。勿論、本人が守るか守らないかは後々分かることだが。
「お土産楽しみだよな」
「そうやね~。色々お菓子買ってきてくれたりしはるし」
「たまによく分からないのも混ざってるけど」
お土産を期待してる三人のレン、晶、美由希。桃子は小さく笑う。なんだかんだで皆、待ってるのだ。夏休みに入ってちょこちょこと出かけて、そして、戻ってきてを繰り返してる。
「ただいま」
恭也が玄関を開けて入ってくる。その手には紙袋。背中には色々と背負ってる。竹刀袋(in木刀+真剣小太刀)などなどだ。
「おかえりなさい。どうだった?」
「前と変わらずだ。師範は変わられてたがな」
「へ~。そういえば、どこに行ってたの?」
「京都がメインだな。父さんがあそこを気に入ってたからな。お世話になったところが多すぎだ」
「あらら」
桃子はそういうが恭也としても良い思い出めぐりになればと送り出すのだ。それにしてもと考える。お土産がやけに多いのだが。
「道場の方たちから、色々と貰ってしまった。また着てくれとも言われてしまったぞ」
「良かったじゃない。そういえば、少し嬉しそうだけど、どうかしたの?」
「ああ。小太刀の道場があったんだが、そこで薫さんの親戚の方にあって良い勝負をしたってくらいだ」
「なるほどね」
なのはやレン、晶、美由希らは話を聞きながらも、袋をあけていく。たくさんのお土産だ。恭也の腕でよく持てたものだとか、紙袋の容積を越えてないかなどという疑問は抱いてはいけない。そんなものは犬に食わせておけばいいのだ。
「疲れてるだろうけど、お風呂にする? ご飯にする? 私たち食べちゃったけど」
「ご飯を先に食べるよ。片付けが片付かないしな」
「分かったわ。じゃあ、暖めてくるわ」
「頼む」
恭也に頼まれ、台所へと消える桃子。恭也はなのはたちの様子を見る。色々と食べ物を出したりしてるのを見ると帰ってきたという実感もわくというものだ。そして、これから土産話で盛り上がるのだ。これから高町家で夜の茶話会が始まるのだ。一人は食事だが。
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