「リインフォース」
あの別れから私は主が居ない。多分普通の人と変わらない状態になっているだろう。そして、今も違うお宅に身を寄せさせていただいてる。優しい家族、暖かな家族のところ。異世界、パラレルワールド。そう捕らえて良い場所に。主はやてとはすでに会った。違う人であった。足の不自由さもなく、家族も共に暮らしている。ただ、違う点はここには魔法という概念が無い。だから、高町なのは、フェイト・テスタロッサといった面々の魔導師は存在しない。今のところ。
「リインフォースさん、どうかしたんですか?」
「仕事が見つからなくて落ち込んでいるんだ」
「お兄ちゃんとお姉ちゃんが連れてきたからある程度のことは考えてると思いますけど」
それは分かる。それに、此処の住人、いや世界の人たちはちょっとおかしい。魔力反応が小さくともある。勿論、全員が全員魔導師というわけじゃないし、魔法という概念が無いのだから当たり前だ。ただ、それなりの訓練をつめば一級の魔導師になれると言えるのだ。しかも、それぞれに個人技能というのか魔法を使ってる。レアスキル。そんな言葉が浮かぶが、はっきり言えば一家族や受継がれるものなのだろう。魔導師体質みたいなものが。修練の先とはいえ、ありえない光景に見える。
「なのはは優しいな」
「それに、お母さんが働くところないなら家でって」
「それは悪いだろう」
部屋まで借りてだし、食事まで。
「気にしてないと思うよ。それに、最初の頃のリインフォースさん知ってるから。また無茶したら駄目だよ」
「あ、ああ」
この世界に来た頃、荒れてたというか、分からない世界と人になったという混乱から当り散らしたのだ。ちなみに魔法は使えるのだが、二人に取り押さえられた。二人とも新たなものを見ても冷静に対処し、私を気絶させたのだ。まぁ、三度か四度ほどで私も落ち着いたのだが。後出てきた場所が良かった。山奥だし。その後、此処に共に来たのだ。なのはは落ち込んでる私を見てなごませてくれた一人だ。
「何とか還る手段もお兄ちゃんたちも探してるし」
「難しいだろうが」
「なのは、リインフォースさん、二人して何話してるんだ?」
「お兄ちゃん。ほら、リインフォースさんの還れるって話」
「まぁ、多分だがな。それよりそろそろお昼だ。俺たちだけだし、何を食べる?」
晶とレンの二人は出かけてるそうだ。片方は合宿で、片方は病院だそうだ。レンは、主はやてに似ている気がするのだが。ただ、こちらの恭也はむこうのなのはの兄とはだいぶ違う。
「何を考えてるか知らないが、お前ももう家族だし、無碍にはしないさ」
「ああ。ありがとう。昼は適当で構わないのだが」
「お兄ちゃんが作ったチャーハンが良いな」
「そうか。レンのほうが美味しいと思うが」
「お兄ちゃんのも美味しいよ」
「そうか」
そして、家に上がっていく。気配が極端に少ない歩き方。いや、移動方法。
「しばらくしたらきたら良い」
「はぁい」
「分かった」
私の手を取るなのは。
「手伝おうか?」
「それは助かる」
「リインフォースさんも」
「分かった」
還れるかどうかはかなり微妙なところ。還れないだろう。もしも此処に居て、人なら間違いなく私も年老いる。これが今までの罰だとしたなら、罰とはいいずらい罰である。神が居るなら、なんとよく分からない事をしてくれるのだろうか。
PR