「麗華、今日はどうするんだ?」
「あら、どうするって何が?」
「帰りだ。どこか寄るのかって聞いてるんだけど」
「ああ。本屋よ」
「本屋?」
「彩にも分かる料理の本をね。あんたからって言ったら喜んで受け取るでしょうし」
なんだか毒がてんこ盛りだな。いや、何時ものことか。
「彩のためとはいえ、珍しいな。何かあるのか?」
「あんたの本探し。そろそろ無い頃でしょ?」
「よくご存知で」
「後」
まだ何かあるのか。
「久々に作りたいものが出来たってだけよ」
ついでに料理もしようって事か。荷物もちもかねろって事なんだろう。それならいいだろう。
「了解。しかし、勝手に厨房の使えばいいんじゃないのか?」
「そうなんだけどね。今回はちょっと違うのが必要なのよ」
「必要なの?」
「ええ。とりあえず気にしないで」
「分かったよ」
この時知らなかった。まさか、二階堂、尊といった面々が色々と画策し動いていたことを。しかも、おっさんまでも動いていたことを。
「まさかこんなことを考えてるとわ」
「あんたは気にしないでしょうけどね。だから、私から教えてあげようと思ったのよ」
「で」
「今まで生きててくれてありがとう、これからもよろしくって意味なのよ」
誕生日を祝うというのがどういうものか今ひとつ分からない俺に簡単に説明してくれた。なるほど分かった気がした。そして、今日は仮って事で俺の誕生日にしたようだ。麗華発案らしい。乗った面々は皆が皆、笑顔だ。おっさんはどこか怒ってるというか、なんと言うかだが、プレゼントをくれた。廃盤になった推理小説を貸してくれるらしい。くれないあたりがケチだけど、貸してもらえるだけありがたいものだ。それに、おっさんらしい配慮だった。他の面々からも色々と貰った。麗華本人からは手作りケーキというのに驚いたが、おっさんにかなりにらまれてしまった。
「騒ぐの嫌いじゃないでしょうけど、理解も出来なかったでしょ?」
「まぁな」
「来年もまたしましょう。貴方が一生懸命に私たちの誕生日を祝ってくれたようにね」
「あれは、何となくだよ」
「そ」
楽しそうな面々を見る。確かに悪くない気分だな。こういう気分は初めてかもしれないな。
PR