「孝平」
「かなでさん、どうかしたんですか?」
「ひなちゃんのこと、お願いね」
「は?」
一瞬意味が分からず、首を傾げてると、かなでさんは真剣な目をしていた。お願いされても、陽菜はしっかりしてるし、俺がお願いされるなら分かるんだけど、そうじゃないところが謎だ。確かにかなでさんはもうすぐ卒業という、別れの季節でもあるわけだし、その分陽菜だって分かってるから動いてるのでは?
「私が卒業して、離れちゃうけど、ひなちゃんの相談とか話とか乗ってあげてって事」
「ああ。確かに俺が何かって言うのは無いですからね」
「逆に私にとっては弟っぽい孝平も心配なんだけど、そのあたりはえりりんときりきりに言ってきた」
もう言った後ですか。いや、かなでさんらしいかな。
「きりきりはだいぶ渋ってたけどね」
「らしいですね。それで何で陽菜だけ俺に?」
「弟に華を持たせようかなって。へーじはちょっとね」
「出来るだけ気にかけておきますよ」
「うん、お願いね。さ~て、部屋の掃除でもしようかな。私掃除苦手だし」
卒業なんだなと思う。会長も東儀先輩も。寂しいとは思う。こうやって後に残されるのは初めてだ。逆に置いてばっかりだから。ほとんど親交の無い生活だったからなぁ。此処にきて正解だったかな。
「孝平、どうかしたの?」
「いいえ。何でも無いですよ、かなでさん」
「そ。早く入らないと寒くなるよ」
「そうですね」
「風邪とか引いてひなちゃんに気を使わせたら駄目だからね。ひなちゃんのことだし、うつされそうだから」
「ですね。さ、俺も部屋の片付けしないと」
「あれ? 孝平の部屋って片付いてなかったっけ?」
「昨日のお茶会のごみとかそのあたりですよ。今日も来るなら片付けくらいはしますよ」
「あはは、お願いね~」
こうやって集まれるのも後何度だろうか。それでも、その日が来るまで俺たちは続ける。今を目一杯楽しむために。
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