「寒いぞ」
「外出て、第一声がそれって。祐一、今日の夕飯がジャムでも良いの!?」
「それは困る。というわけで名雪だけで行ってくれないか?」
「気持ちは分かるけど、荷物もちしてもらわないとおかずが減るよ」
「構わん」
「う~」
困ってるように感じない声を出しながらうなる名雪に俺は苦笑いを浮かべる。寒すぎて動くのすら億劫だ。でも動かないと段々と冷たくなっていくだろう。それはそれで恐ろしいものだ。名雪は寒くないのだろうか? 雪も降って来てるし。
「寒いものは寒いけど、動いてたら少しはマシだよ」
「だぁ~。分かった分かった」
秋子さんの事故の後遺症ではないけど、俺の両親が一時的に帰ってきて法律的な部分などは全てしてくれたおかげで、この街にいてて良いという事になった。秋子さんの負担を少しずつでもへらそうと二人で考えて買い物や掃除などは分担してる。秋子さん曰く『子供が手が離れると寂しいものですね』などと笑っていて、母さんがそれに対して『お互い依存しすぎなのよ』などと厳しく返していた。似てない姉妹なのに、お互い分かり合ってるのだから凄いなぁ。あまり会ってないのに。
「さっさと行って、さっさと帰ろう。部屋の掃除しないと」
「祐一、大学受験の試験大丈夫なの?」
「だから、頭を休めるための外出だ。ちゃっちゃと行って終わらせるぞ」
「分かったよ」
名雪は大学の推薦に受かってるからな。俺の勉学なんかは見てないだろうが、想像は出来るだろう。だから、こうやって気にせず誘うのだろう。あまり気にしても仕方ないという考えだろうけど。
「じゃあ、行くよ~」
「ああ」
走っていこう。どうせ寒いのだから。身体を温めるために。
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