「恭也様、どうかされましたか?」
「いや。ちょっとな」
「私のことですか?」
「……むぅ」
理解されてるというのは分かってるつもりだ。だが、忍と俺との結婚を彼女は後になって聞いたのだ。何とも辛い事だとも思う。だが、彼女は、ノエルは微笑みを浮かべてる。感情が無いとか言っていても、実際にはあったのだ。だが、本人が気づかないだけで。
「お嬢さまと恭也さまの結婚は私にとって嬉しいことです。お子様が居るなら尚更ですが」
「それが不思議なんだが、嫌じゃないのか?」
「私には子供を産めません。ですから、共に居れるのは嬉しいかぎりです。それに、恭也さまがこうやって時間を作って一緒に居てくれますから」
「忍がなんだかんだと作ってくれてるだけなんだがな」
「そうかもしれません。ですが、共にいれてます」
「そうか」
「それに、恭也さまとの逢瀬を許されるというのは、妻としては不安だと思いますよ」
「かもしれんな」
「だから、恭也さま、一時は私のことを。恭也さまが私を思うことと同じように」
「分かった。すまんな」
「いいえ。最もな意見だとも思いますから」
ノエルと一緒の日。子供は忍と共に居る。ノエルの家の掃除などを自分がしてるのだそうだ。あまり細かいのはしないが。そして、俺はノエルと共に居る。忍にとっては心配つきないことだろう。だが、望んでいたことでもあるようだ。ノエルの感情と俺というキー。それを自らも望んだのだから、良かったという言葉がちょっと嬉しくもあり、悪いとも思ってる。
「恭也さま」
「ノエル」
だから、この一時をノエルと共に過ごそう。またにぎやかになるのだから。静かな、和やかに。
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