「相沢さんは、強くあってください。私は弱かったから」
それが天野美汐の最後の言葉だった。
「ごめん、相沢くん。私は弱い人だから」
それが美坂香里の最後との言葉だった。
「祐一さん、佐祐理は舞と一緒に居ます」
それが倉田佐祐理の最後の言葉だった。
俺は一人どうして良いか悩んで考えて、結局何も出来ずにいた。誰も助けられず、過去のことを思い返し、思い出しても、何も出来ず。彼女たちは俺が過去したことによる二度目の決別により、死を選んだ。しぶとく生き残ってるのは俺だけだった。名雪も、秋子さんももう居ない。真琴も、舞も、栞も、あゆも。過去を思い出し、慌てて色々探し回り、そして、見つけたのは息を引き取るほんの少し手前だった。月宮あゆは数年前から意識を戻すことなく、死んだ。無力とかそんなんじゃない。過去の事があって、覚えててもどうしようも無かったかもしれない。彼女たちを死から助ける方法はあったかもしれないし、無かったかもしれない。それでも、俺は無力だと突きつけられた。両親が来て、色々と大人の事情的なものは片付けてくれた。
「祐一、どうする?」
「母さん?」
「此処に居ても辛いなら、私たちと来る? それとも、日本のどこか違うところに移る? 引越し多かったし、他のところでも良いわよ」
かあさんだって秋子さんが事故死は辛いだろうに、それを表に出さない。父さんが受け止めてるのだろう。俺は……
「日本を離れたくは無いし、以前一番長く住んでいた街に居させて欲しい」
「……そう。分かったわ。一緒に居てあげたいけど、難しいし、一人暮らしは流石に、ね」
「ああ。じゃあ、どうするんだ?」
「幾つか電話かけてみるわ。祐一、もしも無理だったら強制で私たちと一緒ね」
「分かった」
もう、どうしようもないこともあるけど、それでも。そして、俺は違う街へと引っ越した。父さんの大学時代の仲間で今でも仲が良い人。そして、俺も知ってるおじさん、おばさんが居て、年が近い姉と弟が居る家だった。父さんや母さんの謎の人脈だとふと思う俺だが、秋子さんも謎だったなと納得するのだった。
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