「デニム、少し構わないか?」
「はい、大丈夫ですよ。ラヴィニスさん。どうかしましたか?」
ドアを開けて入ってくるラヴィニスにデニムは小さく笑みを浮かべて迎え入れる。ラヴィニスからしたら年下のリーダーであるのだが、資料やら書類やらが大量に積まれてる。一応は色々な人が手助けしてたりするのだが、なんだかんだでデニムが断ってしまうため、皆が皆、奪っていくのだ。その中に姉であり尚且つ王女であるカチュアも含まれてる。
「あ~、やっぱりか。皆が皆、入っていって紙を幾つか持って出てくるからと思ったら、書類に囲まれてたのか。私も貰おう」
「あ、ラヴィニスさん、それは終わりましたので」
「ふむ。私のする分はなさそうだな。流石に皆が皆手伝うだけあるな」
デニムは苦笑いだ。本来なら自分の仕事ということで頑張ってたのだが、本当に色々な人が手伝ってくれる。新参者はあまり手伝ってくれないが、それでもしばらくしたら手伝ってくれるようになる。
「気を使っていただいてるみたいで悪いのですけどね」
「一人で気負いすぎるなって事だな。それぞれに理由はあるのだろうがな」
「そうですか?」
「そういうものだよ。無理してると分かるから、年齢が上の者たちは手伝うのだろうしな」
「頼りないのかなぁ」
「頼ってるからこそだよ。書類とかで疲れて戦闘に響いたら困るというのがあるんだ」
「僕だって頑張ってるのだけどなぁ」
「それを認めてるからこそだよ。ま、夜も遅いし退出させてもらおう。早めに寝ないとな」
「ですね。明日は空中庭園に突入ですから」
突入部隊も全て整ってる。本当に最後の戦いになるだろう。そして、そのために色々と書類やら作成はしておかなくてはならない。そして、なんとしてもカチュアだけでも生き延びてもらわねばならないのだ。それが、騎士団の勤めでもあるのだから。
「じゃあ、おやす『がちゃ』」
「でに……む。資料おわったわよ。あら、ラヴィニスさん、お手伝い?」
「のつもりだったんだが、終わってた。少し残念だ」
「私も少ししかもらえなかったわ。立派になってくれるのは嬉しいけど、ちょっと寂しいものね」
「姉さん。ありがとう。とりあえず、皆にも寝るように伝えておいて。明日のためにもね。ラヴィニスさんも」
「分かったわ」
「ああ」
二人が出て行った後、デニムは小さく息を吐き出し、自身の剣を取り出す。
「寝れそうにないかな。流石に」
決戦ともなればという奴だ。デニムは外にこっそりと抜け出す。その後ろを幾人かがついていってると知らずに。
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