「薫子お姉さま、ごきげんよう」
「ごきげんよう」
薫子さんのファンだろう子たちが集まり、私の回りにも集まる。朝の挨拶という攻撃みたいなものだ。毎度囲まれて一人一人離れていく。エルダーとはこういう存在らしい。薫子さん曰く『なれろ』だそうだけど。
「千早お姉さま、ごきげんよう」
「ごきげんよう。皆さん」
挨拶を返す。瞳を潤ませてこちらを熱っぽく見つめるのはちょっと困る。流石に慣れてはきてるが、それでも毎日だからこそだ。エルダーになる前はもう少し気楽だった気がするのだけど。あ~、でも女子高に転校した時点でそれも無いか。何より、一番の理解者であろう史が…『似合ってる』と断言したようなものだ。教室でも多少は遠慮が無いので気が楽だけど、そういう意味では体育とか水泳とかよく助かったなと思う。瑞穂さんの時は何があったのかは聞かないでおくのが正しいのだろうな。きっと。もうすぐ夏休み。優雨は病院に行くらしいし、それぞれに実家に帰ったりとかは伝えてある。
「千早お姉さま」
「どうしかしたの?」
「ちょっとお願いがあって参りました」
「お願い?」
「はい」
珍しいな。私個人にお願いなんて。しかも人前でなんてあまり無かったのに。これまでもそうだったから、今回もそんなところだろうと思っていたのだけど。薫子さんも不思議そうに見てるし。
「夏休み前に、お二方の写真を撮らせてもらいたいのです」
「写真? それは構わないけど、どこで?」
「その今日の放課後に。新聞部の資料用とその皆さんで鑑賞用で配ろうかと」
鑑賞って。それはそれで恐ろしいな。何も言わないのが華なんだろうけど。
「えっと」
「勿論、お姉さま方が嫌なら」
「いいえ、それは良いのだけど、薫子さん、構いませんよね?」
「うん。大丈夫だけど。今日の放課後だね」
そして、その日の放課後、二人で手をつないでるのと背中合わせの二つの種類の写真を撮った。それは、私たちにも渡され、皆も貰っていた。写真部と新聞部のちょっとしたはからいとの事らしいけど、生徒会も手伝ったとか何とか。
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消えないのなら構わないのですが。