「先輩」
「あれ、どうしてここに?」
伽藍の堂は普通の人などが来れない、着難いようになっている。人払いの結界とかなんらかの事を所長から聞いている。それなのに、此処に来るという事は正式なお客さんという事なのかな。
「父に此処に来るようにって言われたんです。その、色々ありまして」
「身体はもう大丈夫?」
「はい。大丈夫です。あの式さんは?」
「式なら、今はお出かけ中だよ。仕事頼まれたみたいだし」
「そうですか」
藤乃ちゃんは小さく笑う。無痛症が治ったわけでは無いらしいのだけど。
「あ、お茶出すね。しばらく待ってれば燈子さんも帰ってくるだろうし」
「手伝いますよ」
「大丈夫だよ。コーヒーで良いかな?」
「はい。じゃあ、座ってますね」
ソファに座ってもらって自身のも入れる。待ってる間に休憩させてもらおう。どうせ、厄介ごとなのだろうから。
「先輩一度お部屋に泊めてもらってありがとうございます。あの時お礼も言えず」
「いや、構わないよ。でも、よく気がついたね。僕が先輩だって」
「入院してる間に思いだしたんです。お世話になりました」
「いえいえ」
こうやってのんびりと会話できるのは悪く無い。いろいろとあったから。
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