「ゆういち~、かおり~、おはよ~」
「名雪、相変わらずな寝ぼけ模様ね」
朝の通学路にて、香里は隣の親友と親友の想い人を見る。といっても、この相沢祐一という男、何気に彼女が居る。そちらも香里は知っている相手。学園の有名人の一人。その付き合いがありながらも名雪の世話(特に朝の)をしてるのは、ある意味でしっかり者である。
「声聴いただけで眠くなりそうだ」
「嘘ばっかり
「慣れたからな。佐祐理」
隣に居た名雪を放置して走っていく男。佐祐理とは彼の恋人だ。紆余曲折あって仲良くなり、一緒にご飯食べたりして、親友の川澄舞という人が間に入って仲が取り持たれたそうな。相沢祐一に何があったかは香里も詳しく知らない。
「勿体無いわね。相沢くんも」
隣にこんな可愛い子が居たのに。それでも、彼が振り向かなかった理由は、彼女の努力がなかったのじゃなく、相沢祐一の見ている世界があっち側という事なんだろう。香里は名雪の愚痴を付き合ったりした。振り向いてくれないことに対して。だが、家族は近すぎるから、恋人になれないのかもしれない。香里はそんなことを後々言った。なんだかんだでそういう意味では、相沢祐一も見る目はある。
「学業が待ってるわよ。名雪」
「く~」
何時もの様子で寝てる名雪。歩きながら寝れる。たまによく寝てる。幸せそうな寝顔で。香里は親友のこの顔が一番なごむ。手を引いて歩く。栞はもう居ないから。
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