「祐一さん、どうかされましたか?」
「?? 秋子さん、俺はどうもしてませんけど」
「いえ、どこかというと変ですけど、なんかって…」
秋子さんは急に俺の頭に手を置いてきた。あ、気持ちが良い。ひんやりとしている手は頭に当たると気持ちが良い。
「凄い熱。どうしてこんな状態で起きてるんですか?」
「あ~、熱が出てるんですか。通りで身体が微妙に重くて、頭痛もするわけですね。いや、頭痛はちょこちょこあったので気づきませんでした」
秋子さんは小さく息を吐き出す。
「祐一さん、辛いなら言ってくださって……いえ、そうですね。とりあえず、温かくして寝ましょうか」
「あ~、そうですね。では、秋子さん、お休みなさい」
まだお昼だし、明るいけど、この状態をよしとしなしだろうし、秋子さんのことだから、何か言ってくるだろう。自室に戻ろうとすると秋子さんが俺の横に立ってにっこりと微笑んだ。美人の微笑みって怖い時と嬉しいときがあるけど、今回は何となく怖かった。
「えいっ♪」
可愛く言ってるけど、実際は俺をソファに倒したのだ。何も出来ずそのまま倒れてしまった。
「あの、秋子さん、何を」
「私に押された程度で倒れる人が二階まで上るなんて難しいですよ。こっちにきてください」
秋子さんの手を引かれると、秋子さんの部屋に連れて行かれてベットの上に横になった。
「気を使ってくださるのは嬉しいですけど、私も一人娘の名雪を育てたお母さんなんだから、大丈夫ですよ」
「うっ」
「確かに事故の影響で難しいこともありますし、祐一さんには色々とお世話になりましたけど、こういう病気の時は頼ってください。寂しいじゃないですか」
「分かりました。以後気をつけます」
「そうですよ。さて、栄養とって薬飲んでもらわないと♪」
少し嬉しそうな秋子さんは、軽く俺を撫でると出て行った。誰かのお世話を出来るのが嬉しいのか、それとも自然と嬉しくなったのか。普段世話かけてる相手をこちらが世話するというのは嬉しいものだからな。とりあえず、名雪になんて言うか考えておこう。送り出した彼氏が本当は熱出してましたって言ったら傷付きそうだし。まぁ、適当に風邪引きかけだったのが昼に出たあたりが無難だろうな。ま、名雪も分かってくれるだろう、きっと。横になっていたら急に寝むたさが着て眠りに落ちるのだった。
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