「エステル、危ない!」
「くっ」
詠唱中の敵の攻撃はかわしにくい。だからこそ、周りに注意を払って詠唱を開始するのだが、今回は意外と強敵が目の前にいて、早い敵のために詠唱の余裕が無い。リタもそれを見越して、詠唱の短い魔法を連発してるし、その補助やら回復のエステルも同じように動いていたが、それでも敵が攻撃してくることがある。仲間の声に反応して逃げる。
「蒼波刃!」
敵の気をそらせるためか、少し怪我を負ってるユーリが果敢に攻める。それに慌てて追いつこうとするカロル。どうにも今回の敵はカロルにとっては厳しいようだ。素早さというか、移動の早さが早い敵は厳しいものだ。
「素早いのは分かってたけど、本当に厄介ね」
「愚痴を零す前に詠唱頼む」
「そうね」
リタもそりゃそうだと魔法を唱えだす。
「ユーリ、助かりました。でも」
「ああ、早めに頼む」
「ヒール」
「活心エイドスタンプ」
「カロルもサンキュ」
「でも、本当に厄介な敵だよね」
素早いだけならユーリとラピード、ジュディスでなんとでもなるが、体力がある魔物だ。それが厄介なことなのだ。そして、そのために皆が皆、多少の怪我プラスで危険になるときがあるのだ。
「とりあえず、早めに倒さないとな」
「だね」
「だったら、援護しろ~~」
「わりぃ」
「私も前に」
「出るな。回復に専念してもらわないと」
「私が安心して魔術唱えられないし」
「というわけだ」
ぶっ倒れたときはお願いという事だ。エステルは苦い顔をしたが、すぐさま敵を見つつ周囲を見る。けが人に回復をって事だ。ユーリが最も動いてるが、敵もそれが厄介な上に攻撃力もそこそこあるユーリを狙う。
「リタ、少し強いの頼む」
「分かったわ。弱点も分かったし」
カロルもユーリももう疲れてるだろうが、それでも戦い続けて勝利をおさめた。
「む~」
「エステル、どうかしたか?」
「ユーリもリタも無理しないでください。カロルが居なかったら危なかったんですから。二人とも傷付いて倒れるとか」
「ごめん」
「悪い。だけど、ああしないと危ないのはエステルやカロルなんだ」
「僕も闘えるのだけど」
「はは、エステル、守ってくれてただろ。身を盾にして守る。大変なんだぜ」
「そ、そうなの?」
「ああ。だから、俺もリタも攻撃に専念できるんだぞ」
「そうなんだ」
納得してるカロルにリタは何も言わない。本当にお疲れのようだ。ジュディスとレイブンはただいま食事つくり。この四人を労うためもある。ラピードは周囲の警戒。流石に連戦は無いと思っていてもって所。
「とりあえず、作ったけど食材も心基ないわね」
「そうか」
「とりあえず、早めに町に着かないと危ないかもよ」
「レイブン、休みたいだけでしょう」
「ばれた? でも無理は禁物でしょ?」
「だな」
宿屋でのんびり過ごしたいのは皆同じだ。早めに町に着くことを祈るしかないのだ。
「次の戦闘メンバー決めておこうぜ。俺とジュディとレイブンとラピードで良いのか?」
「それしかないでしょうに。リタもエステルも疲れてるし」
「分かった。って俺の心配はなしか」
「以前、『剣を振ってたら元気がわいてくる』って」
「ま、そうだけどな。じゃあ、町に戻ろう。無理して倒れたら問題だしな」
「だわね」
「そうね」
そして、それぞれが食事を取り、少しだけ英気を養い、そのまま町まで行くと宿屋で眠り、そのまま買い出しなどもするのだった。新たな武器がないかとか、合成できないかなどだ。外の世界で無理は禁物だ。それは、自然と魔物の脅威から身を守るためである。
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