「エステリーゼ」
「え、あの、ユーリ」
そっと手を取り、お互い向き合う二人。ユーリとエステルにパーティメンバー一同は驚きで固まった。二人がこんな空気になるのは初めてだし、少年少女と言われるリタとカロルは急なことに目を丸くしてる。星喰みの脅威を取り除き、パーティメンバーが揃うのは久々だ。その間にユーリとエステルの間に何かあったのかというのはなかったはずとカロルは休みの日などを考えた。ただユーリは少し考えてるのか息を吐き出した。
「あわね~」
「あ、あの、ユーリ?」
「ああ、悪い。エステル。とりあえず、今のは忘れてくれ」
ユーリの言葉にエステル、カロル、リタ、ジュディス、レイブンのそれぞれは無理だろうそれはと考えた。なんせエステルは記憶力が良いだろうし、あれの意味を理解してるのかしてないのかというのもある。
「ユーリ、どうかしたんです?」
「あ~、まぁ、言っても良いか。カロルもいてるし」
「そうなんです?」
「え、僕に聞かれても」
カロルは何のことか分からず首を傾げてる。リタも分からず首を傾げてる。レイブンは少し考えて思い出したのか苦笑いだ。
「『凛々の明星』にユニオンから正式な話があった。それは、少数精鋭というのと現騎士団やパレストラーレとのやり取りなどの対外的なところでの橋渡し役、ついでにモンスターを討伐やらも請け負うことになるそうだ。で、連絡のことも考えて、俺に口調をって事らしい。ドンはカロルなんだがな」
ユーリの呟きにそりゃあカロルでは年齢的なもので良くないということなのだ。それで最も年長であるユーリになるわけなのだが、ユーリには親しい間柄だと砕けてるという点があり、直せって事なのだ。それこそ大量にそれについて物申したい幼馴染もいるわけなのだ。それを知った次の日にはユーリの前に現れたりするのだ。
「帝都とかに来るということです?」
「ああ。お城にも行くことになるだろう。それに対外交渉でこちらに良い条件とかでエステルに頼むかも~とかリタに頼みが~とか」
「大変な役割をね、レイブンが真っ先に断ったから」
「だって、面倒そうなんだもん」
レイブンの言葉は最もだが、シュバーン隊の長だったものの言葉ではない。しかし、もうシュバーンは居ないという事になってるのでレイブンは今の人生を謳歌しようと思ってる。何より、ドン・ホワイトホースなら見て来いと言うだろうと理解してるのだ。ユーリやカロルのことを。若いギルドの面々たちを。だから補佐という事でくっついてきたのだ。
「補佐としてレイブン、で俺たちには今までの伝手みたいなのがあるからって事なんだそうだ。しかし、慣れないことするものじゃないな。ジュディ、あとで付き合ってくれ。身体動かして~」
「あら、いいわよ。でも、ユーリがあんな積極的に言うなんて、どうかしたの?」
「フレンが一度くらいちゃんと呼べって言ってたからな。エステルが嫌がったって言っておこう」
「そうね。そのほうがいいわ。エステル?」
「あ、はい。そうですね。たまに呼ばれるのは良いですけど、毎回だとちょっと硬い気がします」
しかしエステルは微妙なことを考えていた。胸がどきどきして頬が少し赤いのだ。熱いのも本人は自覚してる。理由は分かってる。ユーリの声だったし、ユーリから呼ばれた名前だ。ヨーデルからはよく呼ばれてるが、ユーリは想定してなかったためだろうか。一人考えに落ち込んでるのだが。
「あまり時間も無いし、せっかく集まったんだし、やろうか?」
「そうね」
ハルルの町、そこで、今年はお花見だ。時間が無いと言っても明日もオフにはなってる。が、急な仕事というのはどこでもあるものだ。なんせブラスティアが無いというのは色々と不便にもなり、魔物の脅威は、拡大してるのだから。
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