エイプリルフール、それはうそをついても、あとでネタ晴らしをしたら良しとされる日。ついでに謝ったり仲良くなったりする日。エステルはそれを聞いて少し考えていた。聞いたのはその前日。そして、今は当日。
「フレン」
「エステリーゼさま、どうかされたのですか?」
「実は、フレンに相談があるんです」
「私にですか?」
「はい。実は」
フレンは直立不動でエステルの言葉を待っている。騎士としてお姫様、副帝のお言葉を待ってるのだ。
「ユーリのことが頭から離れないのです」
「ゆ、ユーリのことですか?」
「はい。考えると頬も熱くなってしまって、胸もぽかぽかして、ご飯も喉を通ってくれないんです」
「え、あ、え」
フレンは大絶賛混乱中。お城の中でちょっとした暇潰しのつもりだったが、フレンが此処まで混乱するような要素はなかったはずとエステルが考えていた。少し頬が赤いのは化粧の影響なのだが。
「エステリーゼさま、それは、その」
「フレン」
「はい?」
「先ほどのは嘘ですよ。エイプリルフールの嘘です」
「ええっ!! また、なんでそんなことを!?」
「仕事を終えて、暇を持て余していたのと、フレンが盛大な勘違いをしてるので早めに正さないとユーリに迷惑がかかっちゃいます」
フレンは息を吐き出した。もしも本当ならユーリには首に鎖をつけてでも捕まえておかないといけないだろう。世界最強の黒獅子の異名を持ってるものであるので単体で挑んではいけない。それに自由を好むユーリを捕まえるのは大変だ。
「でも、ユーリの隣に立つ女性ってイメージわきませんね」
「そう、ですか? あ~、でも確かに」
ジュディスやリタを思い浮かべるが、無いなと考える。年齢もそうだが、ジュディスあたりは分からないというところだ。
「ユーリの恋人とか、大変そうです。何時も心配してそうですし」
「そうですね。今はどこに?」
「確か、ハルルの道中のモンスターを退治して、あとはオルニオンのほうだったと」
「凛々の明星も今、本当に大変そうだしね」
「ええ。私という入り口があるために、ギルドから騎士団とか皇族とか色々頼まれてるそうです。五大ギルドの少し下辺りとカロルが嬉しそうに話してました」
「そうなんだ。確かに彼らが間に入ってくれてるおかげで私も楽です」
フレンにしても気心というか、ある程度知れてる仲のほうが楽というのはあるのだ。腹の探り合いというのは気づかれを起こすものだ。そんなエイプリルフール。結局真面目な話で落ち着くというものだった。
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