「エステル、ちょっとこっちにきてくれないか?」
「どうかしたんですか?」
首を傾げつつもユーリの言われるところまで来るエステル。ユーリはそんなエステルを座らせる。野宿というわけじゃなく宿屋で今日は大部屋だ。二部屋取れない場合は男女相部屋である。
「ちょっとな、少し横になってくれないか?」
「はぁ?」
その様子を周囲の仲間たちは驚きと共に見ている。ユーリの横でころんと横になるエステル。ユーリは彼女の頭近くに座っている。
「少しこちら側を向いてくれ。あ、身体ごとな」
「え、はい」
意味が分からずともユーリの言う事を聞いてるエステル。どういう意味か考えてるが分からないものは分からない。
「ああ、やっぱり」
「はい?」
エステルの頭を持って、ユーリは膝に乗っける。横になったままのエステルは体を引きずられたことになるが、その行いに驚き固まってしまった。
「ゆゆゆゆ、ユーリ!?」
「動くなよ。普段なら反応しそうなのに反応してなかったからもしかしたらって思ったけど」
ユーリはそういってエステルの耳あたりの髪の毛をどかして耳掻きでこりこりと出して行く。耳掃除である。エステルはその感触にこそばゆい感じを受けつつも何も言えなかった。周りも微妙な納得と期待通りでなかったことに言葉を詰まらせる。
「耳掃除くらいなら私一人でも」
「エステルのことだから、毎日しててもこれなんだろうな。あまりしてないんじゃなくてお風呂のときくらいだろうし、それだと取れにくかったりする人は居るからな。ま、あまりエステルに危険な事があるとな」
金髪の王子様のような騎士団長代理が怒り狂うだろうということだ。エステルはユーリにされるがままで微妙に熱くなる頬と身体に驚いていた。しかも冷静になろうとすればするほど近くにあるユーリの顔や長いつややかな髪などで結局乱されるのだった。
「びっくりしたぁ。ユーリが急にエステルを」
「ん、襲うとでも思ったのか?」
「う、うん」
そう見えてしまった多感な少年カロル。ユーリは小さく笑みを浮かべる。
「そう見えるように仕向けただけなんだけどな。ちなみに発案は」
「私よ。リタ、そんなに本を掴むと本が指跡で曲がるわよ」
「うわっ」
すでに曲がってる。
「それとおじさま」
「あ、え、なんだい?」
「そのままだと」
「あうち」
矢が刺さるよって言おうとしたジュディスだったが、すでに遅かった。
「闘う事が多いのだしね」
ジュディスはそういってにこやかに笑みを浮かべる。企画発案の美女は楽しげに微笑むのだった。
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