「舞、大丈夫か?」
「大丈夫? 舞」
二人の心配は分かる。花粉症でない二人からしたら私が熱を出すほどまでに悪化したことの心配をしてる。
「だいじょうぶ」
「でも、今年は本当に酷いんだな。一応、身体は玄関前で払うけど、手洗いうがいとか洗顔もしてるけどな」
「やっぱり辛いんでしょうね」
大丈夫といってもやっぱり二人は心配顔だ。私が熱を出すのが珍しいというのもあるだろうけど。魔物退治の時は緊張もあってこういう事はなかったのだけど、最近はなかったから、今になって体が反応してきたみたいなのだ。ちなみに祐一談。
「とりあえず、食欲とかもあるだろうし、頼まれた物は買ってきましたよ」
「すみません。心配であまり出てなかったので」
「いやいや、お世話になってますし、これくらいなら良いですよ」
祐一はたまに此処に着て勉強なんかをしてるし、ご飯も食べていく。一緒に住もうという計画はやはり男親の多大な反対と秋子さんの『祐一さんはまだ高校生ですから』で却下になった。祐一は大学を一緒のところにしようって努力してる。勉強にしても落ちていた学力は取り戻して、段々と上がってきてるし。
「ごめんね、今日は買い物の用事もあったのに」
「また出たらいいんだし。気にしないで良いさ」
「でも、祐一の大学祝いだったのに」
「ばぁか。それこそ気にするなよ。舞が元気になってから出かけようぜ」
「うん」
三人で一緒に。佐祐理は笑顔で私を見てる。
「じゃあ、今日、祐一さんは?」
「ま、一緒に居させてもらおうかな。ついでに色々お菓子やらも買ってきたし」
「じゃあ、ここでお祝いですね~」
「うん」
「俺も準備手伝いましょうか?」
「いえいえ。佐祐理だけで十分ですよ~。舞と話しててくださいね~。暇でしょうし」
「そうさせてもらうわ」
私と祐一を置いて佐祐理は出て行ってしまった。お互い苦笑い。気を使ってくれたわけじゃないだろうけど、学生の間に一緒に暮らすのは難しいみたいというのは以前話していた。
「祐一、此処にはまた着てね」
「舞。約束だもんな」
「うん」
私と祐一の約束。分かれるときにまた会おうって事。今度は祐一と私が忘れない間に。大学なら昼に会うことを考えてる。祐一もそのことを考えて一緒の大学を受けてくれたのだと思う。聞いたら行きたい学科があるって言ってたけど。それもあるだろうけど、多分私たちのことも考えてだろう。優しいから祐一は。
「少し寝てるし、起こして」
「ああ。そうだな。起きたら、食べれるだろ」
「うん。本当に軽い熱だから」
「ああ」
祐一は私が寝てる横で本を開いてる。ゆったりのんびりとした時間。しゃべらなくてもお互いにこうやって出来てる幸せは私たちの経験から得たものだ。寝むり、起きたら、三人で喋ろう。これからの事を。
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エイプリルフール、それはうそをついても、あとでネタ晴らしをしたら良しとされる日。ついでに謝ったり仲良くなったりする日。エステルはそれを聞いて少し考えていた。聞いたのはその前日。そして、今は当日。
「フレン」
「エステリーゼさま、どうかされたのですか?」
「実は、フレンに相談があるんです」
「私にですか?」
「はい。実は」
フレンは直立不動でエステルの言葉を待っている。騎士としてお姫様、副帝のお言葉を待ってるのだ。
「ユーリのことが頭から離れないのです」
「ゆ、ユーリのことですか?」
「はい。考えると頬も熱くなってしまって、胸もぽかぽかして、ご飯も喉を通ってくれないんです」
「え、あ、え」
フレンは大絶賛混乱中。お城の中でちょっとした暇潰しのつもりだったが、フレンが此処まで混乱するような要素はなかったはずとエステルが考えていた。少し頬が赤いのは化粧の影響なのだが。
「エステリーゼさま、それは、その」
「フレン」
「はい?」
「先ほどのは嘘ですよ。エイプリルフールの嘘です」
「ええっ!! また、なんでそんなことを!?」
「仕事を終えて、暇を持て余していたのと、フレンが盛大な勘違いをしてるので早めに正さないとユーリに迷惑がかかっちゃいます」
フレンは息を吐き出した。もしも本当ならユーリには首に鎖をつけてでも捕まえておかないといけないだろう。世界最強の黒獅子の異名を持ってるものであるので単体で挑んではいけない。それに自由を好むユーリを捕まえるのは大変だ。
「でも、ユーリの隣に立つ女性ってイメージわきませんね」
「そう、ですか? あ~、でも確かに」
ジュディスやリタを思い浮かべるが、無いなと考える。年齢もそうだが、ジュディスあたりは分からないというところだ。
「ユーリの恋人とか、大変そうです。何時も心配してそうですし」
「そうですね。今はどこに?」
「確か、ハルルの道中のモンスターを退治して、あとはオルニオンのほうだったと」
「凛々の明星も今、本当に大変そうだしね」
「ええ。私という入り口があるために、ギルドから騎士団とか皇族とか色々頼まれてるそうです。五大ギルドの少し下辺りとカロルが嬉しそうに話してました」
「そうなんだ。確かに彼らが間に入ってくれてるおかげで私も楽です」
フレンにしても気心というか、ある程度知れてる仲のほうが楽というのはあるのだ。腹の探り合いというのは気づかれを起こすものだ。そんなエイプリルフール。結局真面目な話で落ち着くというものだった。