「黒子っち」
「黄瀬くん、どうかしましたか?」
声をかけてきた黄瀬に対して、黒子は冷静に切り返す。
「何を運んでるんすか?」
「黄瀬くんが出し忘れていたボール籠ですけど」
「すみませんっす」
こういうちょっとした漫談みたいなのが見られるようになった。
「あ、テツくん」
「はい?」
桃井に声をかけられて、黒子は振り返る。桃井はバスケ部のマネージャーだし、黒子に気がある人物だ。黒子が全く気づいてないのか気づいてるのか誰もが首を傾げるところだが。
「これ、この前借りたタオル。ありがとう」
「いえ。でも、大丈夫でしたか? 激しかったですし」
「う、うん。ちょっとびっくりしちゃったね。大きかったし」
「いきなりでしたしね」
「そうだね。今度からは気をつけるよ。本当にありがとう」
二人の会話はどこかとんちがかかってるようで皆が皆、首を傾げつつも興味を持ってしまった。思春期真っ只中の面々。
「黒子っち。桃っちと何かあったんすか?」
「雨が降ってきたんで、傘を忘れた桃井さんにタオルを貸しただけです」
「え、それだけ?」
「はい」
黒子は言葉を選んだ様子もなくさらっとこたえて黄瀬から離れていく。と、そこに黒峰が現れてにやにやと笑ってる。
「実際は違うんだけどな」
「そうなんすか?」
「その雨の時、相合傘して帰ってたらしいぞ」
「そうらしい」
緑間も加わった。
「え、じゃあ」
「そうなのだよ。あの二人、ぷちデートみたいなものだったらしい」
「見てないから分からないけど、あれは何かあったな」
それぞれが黒子と桃井を見る。桃井は黒子を視界に入れつつちょっと嬉しそうに動いてるし、黒子にしても普段よりよく消えてる。さすがの影の薄さである。そんなみんなの色々な考えが混じった日常。
ちなみに普通に相合傘でも肩は濡れるし、激しく降れば尚更である。
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