「デニム!!」
騎士団の後方で回復に勤めていたオリビアから叫び声が上がる。デニムは先ほど敵の矢に当たりしっかりとした休息と眠る事が必要だったのだ。そのために、今は他の面々が前線に立って闘っている。
「今の状態を維持!!僕も参加します」
「大人しく寝とけ」
その声はデニムの前からだった。
「お前が倒れて心配なのは皆一緒なんだ」
「そのためにいらない犠牲を強いる必要は無いはずです」
「だからといって、お前が前に出れば狙い撃ちだぞ」
「それこそ意味があるはずです」
「バカ野郎。何のために俺たちが居ると思ってる。的なら前に居るナイトと忍者が頑張ってくれてるさ」
カノープスはそういうとにやりと笑う。そして、矢を番え構える。その姿は頼りになる戦士だ。
「しかし、それでは難しいところもあるでしょう」
全面戦争。そういっても過言でも無いし、これによりヴァレリアの未来が決まるという戦いだ。南北に別れ、もう少しで統一。そのための戦だ。
「大丈夫さ。全部を背負い込む必要は無い。何より、お前さんは隣のオリビアと戻ってきたラヴィニスの説得をしないとな」
「何してるのですか? 貴方は大将なのですから、怪我の治療が終われば出なくてはなりません。この程度の戦力くらい倒すのになんてことは無いのですから、安心して後ろにいててください!」
槍でつつかなくとも大人しくしていろと目がいっている。オリビアも着てデニムを捕まえる。文字通り身体全部でデニムの腕を捕まえていた。外すのは簡単だが、体力のあるほうではない彼女は息が乱れている。
「『僕は大丈夫だから、他の人を』って言っておいて、一番ダメージ大きいから寝ていてもらったのに」
「でも、本当に大丈夫だから」
「本当に大丈夫なのは分からなくもないけど、休むのも仕事なの」
「パルミーフリーズ」
「えっ!」
デニムはその声に驚いて振り返る。カノープスが手を振っていた。魔法を唱えていたのはラヴィニス。眠ってもらっておこうということだ。怪我の治療もまだなのでその分も手伝って魔法の抵抗力が落ちていた。ゆっくりと倒れるデニムをオリビアが支える。
「連れて行ってくれて大丈夫よ。私たちに任せなさいって」
「ごめんなさい」
「良いのよ。さ、前の敵を殲滅しますか」
「ああ」
三人ほど走ってきている。デニムを倒せば勝利だという感じで突っ込んできたのだろう。その三人を前に槍と弓を構える。
「行くわ」
「援護は任せろ!」
「OK」
そして、ラヴィニスが走りこみ、それを追い抜いてカノープスの矢が敵に到達するのだった。デニムはオリビアに運ばれて眠りこけることとなる。起きたとき、その場の戦いは終わっていて、起こしてくれたら良いのにとふて腐れていたが、皆が皆、少しは休めと揃えて言われていた。
PR
「デニム」
「何かありましたか?」
「仲間に加えたダークドラゴンが暴れてるんだ」
「ん~、じゃあ、僕が行くよ。仲間になってもらったばかりだし」
勧誘した仲間を気にしてるデニムに呼びかけた仲間は苦笑い。たまに勧誘した魔物系統のものが暴れるのはある。言葉を話せるのが魔物使いの勧誘した者や同じ勧誘持ちの者たちだけだからだ。デニムは早々に仲間になってくれたら戦力になると覚えたのだ。
『ぐぎゃぎゃぎゃ。ぎゃーーす』
大きな声を上げてどこか暴れそうなのを周囲で押さえてる。ロープが切れたら暴れてしまいそうだ。
「どうかしたの?」(ドラゴン語で)
「ぐぎゃぎゃぎゃ!」(傷の手当てと食事を要求する!!)
「ごめんなさい。怪我の治療と食事はすぐ準備するよ」(ドラゴン語)
「皆、食べ物とこの子の回復を」
「分かりました」
周囲の面々が怪我の治療と食事を差し出す。暴れも収まりロープを押さえてる者たちもほっと一息だ。これで病気だとか他にもこんなところ嫌だって言うものも居るのだ。元々野生で人間の間というのは嫌なものだろう。
「ぐぎゃぎゃ」(ありがとうロープ食い込んで痛いし、助かったよ)
「どういたしまして。仲間に入ってもらったのに無理させたら悪いし」(ドラゴン語で)
「ぐぎゃ」(これからよろしく)
「こちらこそ、よろしくね」(ドラゴン語で)
友情を深めてる一匹と一人なのだが、周囲から見ると今ひとつ感動シーンにもならない。なんせドラゴンというのは結構凶暴なのだ。口をあけて何か話すさまは人をいただきま~すという感じである。周りはあわあわ、一人おちついてるデニムであるのだが、これが後々他のドラゴンや魔物、人形などで見られるようになるのだが、それはまた違うお話。